自民党の安倍晋三総裁は記者団に対し「次の選挙までにネット選挙は解禁すべきだ」と述べ、来年夏の参院選までにインターネットを利用した選挙運動の解禁を目指す考えを表明した。理由として「選挙の広報活動や選挙情報の交換はネットを使うことが求められている。投票率上昇にもつながると思う」と指摘した。
新経済連盟の三木谷浩史代表理事(楽天会長兼社長)らとの会合後、記者団に対しインターネットを利用した選挙活動を「次の選挙までに解禁すべきだ」と述べた。“次期首相”の発言で、早ければ来夏の参院選でネット選挙が実現する可能性が高まった。実現すれば若者を中心に投票率の向上が見込めるほか、各党の選挙広告費がIT関連企業に流入し、業界の追い風にもなりそうだ。
安倍氏は三木谷氏らとの会談後、「ネットは広報活動や情報交換に役立つ。投票率向上にもつながるだろう」と述べた。IT業界は以前から「街宣車で名前を連呼するのではなく、ネットを使った政策本位の選挙をすべきだ」(三木谷氏)と主張。2010年には与野党が解禁に合意したが、政局の混迷で法整備が先送りされた経緯がある。
現行の公職選挙法では選挙期間中、不特定多数に対する「文書図画の頒布」を禁止。資金力の格差により、配れるチラシやポスターの枚数に差が付くことを防ぐ趣旨だが、選挙を所管する総務省はホームページやブログの更新も「不特定多数への文書頒布にあたる」と解釈。東京高裁も09年に同様の判例を出しており、ネットを使った呼びかけは現時点では公選法違反となる。
ただ、動画投稿サイトやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の急速な普及を受け、海外ではネット選挙が拡大。先の米大統領選や韓国大統領選でもユーチューブやツイッター、フェイスブック上での“舌戦”が繰り広げられた。今回の衆院選でも、候補者以外の支援者や政党関係者らが「勝手連」を名乗り、候補者の奮闘ぶりや演説内容などをブログやツイッターなどで発信。ネット選挙は「事実上の解禁状態にあった」。
総務省内でも「ネット禁止は時代遅れ」(幹部)との声が強まっているほか、IT業界では解禁後、選挙関連サイトのクリック数や広告収入の増加をあてこむ動きもある。安倍総裁の“解禁宣言”を受け、同省は新政権発足後、本格的な制度設計に着手する見込みだ。