全国の女性首長は26人!!

2012/04/08

日本社会のリーダー不在の裏返しで、全国で政治塾の創設ラッシュが続いている。中でも大阪市長の橋下徹率いる大阪維新の会の「維新政治塾」と並んで注目を集めているのが滋賀県知事、嘉田由紀子が22日に開講する「未来政治塾」だ。「政治家に子育て中の主婦や若い女性が少なく、民意の代表者となっていない。(女性の)新規参入を促す場をつくりたかった」
こう説明する嘉田が塾長を務め、事務局長も女性と運営は女性中心だ。当初定員300人に対し871人が応募し、約4割が女子中学生を含む女性だったという。当面は地方首長・議員の候補者養成を目指す。政治塾立ち上げのきっかけとなったのが、1月の大津市長選で女性最年少市長で36歳の越直美が当選したことだった。嘉田は「女性や若者といった多様な候補者に対する潜在的なニーズが証明された」と話す。
同一都道府県の知事と県庁所在地の市長がともに女性になるのは初めて。その越は市長就任日の1月25日、嘉田を訪ねて県市連携を強調し、「女性の時代」をアピールした。越が2月20日の定例市議会で行った所信表明演説では、市議会のインターネット中継にアクセスが殺到して約40分間パンク状態となった。女性首長が注目を集めるのはなぜか。地方自治に詳しい北山俊哉・関西学院大教授は「地方首長は市民生活に近く、女性らしい視点を生かしやすい」と分析する。一方、未来政治塾の事務局長を務める滋賀県議、駒井千代はこう指摘する。
「東日本大震災の影響も大きい。震災後の対応などで女性の政治不信は増幅しており、女性の政治参加は今後も増える」全国の女性首長は3月末現在で26人。全体に占める女性の割合は1・5%程度だが、さまざまな摩擦も引き起こしている。嘉田は「もったいない」を合言葉に新幹線の新駅建設中止に踏み切ったが、「知事は地域経済のことを何も考えていない」という不満が地元の一部では今も渦巻いている。越市長も就任まもなく、インターネットの交流サイトに英語で「日本のメディアは何でこうなのだろう。自分の考えていることが伝わらない」などと書き込み、政治的な未熟さを露呈した。良くも悪くも注目されることについて嘉田は言葉に力を込めて言う。「女性の政治進出が当たり前で、何の話題にもならない世の中を目指したい」
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山形県知事の吉村美栄子は歴代6人目、東北では初の女性知事だが、元主婦の本人は「政治家を志したことはなかった」という。4年前、57歳だった吉村に出馬を要請した自治労県委員長の岡田新一は「白羽の矢」を立てた理由について(1)主婦、子育て経験(2)お茶の水女子大卒の学歴(3)行政書士事務所を立ち上げた実績(4)夫の叔父は元山形市長?などを挙げる。
吉村は弁護士の夫と結婚後、夫の望みで勤めていたリクルートを辞め専業主婦に。死別後、子育て中にとった行政書士の資格を活用して事務所を開業し、夫の両親との同居を続けながら長女と長男を育てた。主婦生活は約20年間に及ぶ。知事選では補助金を大幅カットし行財政改革を進めてきた現職に対抗し、「あったかい県政」を訴え、約1万票差で当選した。
全国的に名前が知られるきっかけは、東日本大震災後の原発対応だろう。滋賀県知事の嘉田とともに段階的に原発を縮小する「卒原発」を全国知事会で提唱した。女性知事2人のタッグは注目を集めた。「リスクを伴うことがわかったのだから方向転換すべきだろう。地方からできることをやっていく」エネルギーの自給自足を目指し、再生可能エネルギー導入を図る。新年度からはトップダウンで環境エネルギー部を創設した。
「主婦感覚、大いに結構ではないか。男性は過去の延長でやっているから現状維持になりがちだが女性は全然ない。サッチャー英元首相がそうだった」山形銀行の長谷川吉茂頭取はこう評価する。就任以来、当初予算が4年連続で増額となり借金がふくらんだ財政運営や、原発対応を含む電力需給への姿勢には批判も根強いが、吉村はまなじりを決して語る。「私は鉄の女にならなきゃいけないと思っている。リーダーは強くなければ。だから常に眉毛も太く描いているんです」