台風や集中豪雨の際、田畑の様子を見に行き、川に転落するなどして死亡・行方不明となる農家の人たちの「見回り事故」が後を絶たないため、農林水産省は、暴風雨時の見回りを自粛するよう呼びかけることを決めた。これまでは浸水時の排水など、農作物の被害拡大の防止を目的に事実上、見回りを“容認”してきたが、安全面の重視へと方針転換を図る。
同省では2005年9月、西日本を中心に記録的な豪雨をもたらした台風14号の九州上陸を前に、「冠水や浸水等を受けたほ場(田畑)では、速やかな排水に努める」などと、農作物の被害軽減を図るための具体的な方策を都道府県に初めて通知した。以降、台風の接近時などに同様の通知を出している。通知では、田畑の見回りについて「気象情報を十分に確認し、大雨や強風が収まってから行う」と触れているが、田畑は冠水すると、農家にとって大きな損害になる。このため、暴風雨にもかかわらず、様子を確認しに出かけたり、排水板を開けて少しでも浸水被害を食い止めようとしたりして、川や水田などに転落するケースが少なくない。
静岡大防災総合センターの牛山素行准教授(災害情報学)のまとめによると、2004~11年に台風・豪雨時に建設作業や川遊びなどで河川に近づいて死亡したのは170人。このうち、農作物の見回り中に犠牲になったのは、4割を超える75人に上ったという。