大分合同新聞報道によると・・・「参院選の争点の一つとなっている環太平洋連携協定(TPP)。安倍晋三首相は3月に交渉参加を表明した。政府はコメなど5品目を関税撤廃の例外(聖域)となるよう交渉で求めていく方針だが、認められなければ県農業は大きな打撃を受ける可能性がある。関係団体、農家は選挙戦の議論を注視している。安倍首相は大分市の街頭演説で「農業はしっかり守る」と強調した。演説を聞いたJAグループ大分の幹部の一人は「交渉は関税撤廃が原則。その保証はないのでは…」と不安を口にした。
グループの農政運動組織は1月、「交渉参加に反対」の立場で大分選挙区の自民党候補と政策協定を交わし推薦を決めた。だが政府はその後、交渉参加を決定。グループ関係者は「政府決定をめぐり内部で推薦の取り扱いをどうするか議論はあった。結局、与党に理解者を増やし、TPPに反対していくしかないとまとまった」と説明する。農家もTPP問題の行方に気をもむ。世帯収入の約3割を占めるコメが聖域に認められなければ、国産の半分以下の値段で外国産が入るともいわれる。「太刀打ちできない。稲作はできなくなる」と危ぶむ。
県内は保守層の農家を中心に「経済が疲弊すれば農産物も買ってもらえない」「国が農業対策を示すだろう」と、TPP参加はやむなしという見方もある。中央では農地集積による大規模経営、6次産業化や輸出などで競争力を高める“攻めの農業”の実践も叫ばれている。地理条件が不利な中山間地が7割を占める県内。過疎、高齢化が進み「そもそも人材がいない。生産性を上げる努力は確かに必要だが、外国と競争で渡り合えるような“攻め”ができるのは限られるのではないか」。地域の実情を踏まえた上で、今後の農業をどう考えているのか。政府の主張を見極めたいと思っている。
≪メモ≫ TPPは米国、オーストラリア、ベトナムなど11カ国が交渉に参加。扱う対象は知的財産、投資、労働など21分野におよぶ。政府はコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目を例外として求めるが、関税撤廃が原則のため厳しい交渉が予想されている。県の試算によると、関税が撤廃されて国内対策をしない場合、農林水産業の産出額は332億円減る。県経済全体では輸出や消費が伸びて県内総生産額が280億円増えるとみている。