大分合同新聞報道によると・・・・・『県内で最も教育改革に熱心なのは日田市教委かもしれない。全国学力テストでは本年度から全国平均を上回った学校名の公表が解禁されたが、日田市ではすでに昨年度、市内統一テストで市内全小中学校の成績を原則公表とした。さらに、学校行事や授業時間数を確保するため、本年度は夏休みを1週間短縮。教育現場からは「学校のランク付けにつながる」と懸念の声も挙がる一方、教員の指導力不足を改善しようとする動きもある。教育改革に揺れる学校現場を歩いた。
市中心部にある東部中学校の数学の授業。若手の教師が2人で班に分かれた生徒の指導に当たっていた。数学担当の西村博之教諭(47)が「生徒がお互いに教え合えるので時間効率がいい。若手教員には積極的に指導方法を伝えている」と教えてくれた。同校では、教科担当者ごとのミーティングを開き、授業の進み具合、テスト問題作成、板書の仕方、チョークの色づかいまで話し合う。「どうすれば生徒に分かりやすく教えられるか、みんな必死です」と西村教諭。
◆ ◆ ◆ 昨年度の県基礎基本定着状況調査と全国学力テストで、同校は理数科目の力不足が浮き彫りになった。小野博康校長は「例年は県平均程度だが…。教員が一体となって複数教員による補習や少人数授業にさらに力を入れていく」と気を引き締めた。市教委は教員個人の能力に頼るのではなく、組織として指導力を高める教師同士の「チームティーチング」に力を入れる方針だが、すべての学校に教員が補充されている訳ではない。「このままでは先生たちの体がもたないと思う…」ある小学校のベテラン教諭が本音を漏らした。
◆ ◆ ◆ 同校では、市教委の教育改革に対応しようと、教員らで相談し、少人数クラスや教員2人態勢での授業にも取り組む。それでも部活動や教材研究、休み明けテストの作成に加え、平和学習の準備など、学力向上以外の仕事をいくつも抱える。学校に学力向上支援教員がいるかいないかで、教員1人当たりの負担が大きく変わってくる。「結局、犠牲にするのは自分の時間…。夏休みを消化できなかった先生もいる」と打ち明けた。
最も気になるのは統一テストの成績の公表だという。「年中、学校ごとの成績を垂れ流す必要はないでしょう。教員にはプレッシャーにしか感じられない。でも、やるからには子どもたちの力になるよう、現場は精いっぱい努力するだけですよ」 ベテラン教員はそう言って力なく笑った。保護者ら 授業の改善点の説明を求める。学校ごとの成績公表や夏休みの短縮など、日田市教委が進める教育改革を、保護者はどう受け止めているのか。
「成績公表だけでは判断できない。公表結果がどう授業に反映されるのかが保護者らに伝わらないと意味がない」。そう指摘するのは市内の小中学校に通う児童、生徒の保護者らでつくる市連合育友会の和田浩二会長。学力向上に期待する一方、改善策が見えにくい教育現場に歯がゆさを感じているという。成績のホームページへの掲載についても、和田会長は「資料の公表だけでは数値が独り歩きしてしまいかねない」と懸念する。「クラス懇談会など、保護者が集まる機会に学校側から指導の改善点をしっかり報告してほしい」と注文した。
一方、夏休み短縮については批判的な声が多い。多くの保護者が「学力向上のための短縮」と受け止めており、「子どもたちの地域行事の参加が減った」「土曜授業の方が子どもや学校の負担が少ない」「学力向上になっているか分からない」との声。当の子どもたちは「仕方がない」としぶしぶ登校しているという。子どもたちの苦手分野の把握と教師の指導力向上。本来の目的を達成するために、市教委や学校側には積極的な説明が求められている。学校内だけでなく、保護者を巻き込んだ教育現場の「見える化」が必要だろう。』
メモ:「学校ごとの成績公表は、学校の序列化ではなく、指導力改善につなげることが狙い」と日田市教委。昨年度、県教委の組織改革推進プランに基づき、三カ年計画の学力向上アクションプランを作成した。学力テストの目標平均正答率や習熟度別授業の拡充率などを掲げる。指導教諭や学力向上支援教員、習熟度別指導推進教員を一部の小中学校に配置。学校図書館を使った活用力向上のための授業改善、教材作りなどの負担を軽減するための教員間共有フォルダ活用などに取り組んでいる。 ※この記事は、9月18日大分合同新聞夕刊1ページに掲載されています。