大分合同新聞報道によると・・・「日田市内に市指定の避難所が124カ所ある。市内中津江村の旧中津江小学校も避難所の一つだが、県選定の土砂災害危険箇所にあることを市民は問題視(11月5日既報)している。同市の場合、危険箇所内の避難所は19カ所あり、うち18カ所が山間部の多い旧5町村内にある。危険箇所内の避難所について、市は「土砂だけでなく火事、洪水などあらゆる災害を想定した結果」と見解を示す。急傾斜地ばかりの山間部で災害にどう備え、避難すべきなのか。現地を歩いた。
「私が移り住んで50年近くになるが、幸いにも市指定の避難所が開設されたことはない」と旧小学校がある川辺地区の大内啓康自治会長(73)。しかし、「広島県の土砂災害などを考えると、中津江村でもいつ大災害が起きるか分からない。明日にでも市指定の避難所を利用することになるかもしれない」と不安な表情を浮かべた。
市によると、避難所は災害時に避難勧告を発令する際に開設するが、「現地の状況に応じて開く」と説明する。実際に2012年の県豪雨の際は浸水の恐れがあるとして開設できなかった避難所もあった。危険箇所に選定されている避難所は「一時的に使えるかもしれないが、危険性があると判断した場合は開設できないときもある。その際は、近くの他の避難所か、個々の判断で安全な場所に逃げてもらうしかない」という。
旧中津江小学校から最も近い避難所は津江中学校だが、約3キロ離れている。「地域には高齢者も多く、みんなが逃げ切るのは難しいでしょう」と大内自治会長。旧小学校近くに住む60代の主婦は「大規模災害だと道路も通れるか分からない。遠くて安全な場所に避難するよりも、少し危なくても近くの避難所の方がいいかもしれない」と不安げに旧校舎を見上げた。
市防災危機管理室によると、避難所は既存の公共施設を指定している。指定可能な施設も限られ、担当者は「絶対に危険のない場所を確保するのは困難だ」と頭を抱える。地域住民の中には「極論を言えば山間部はどこも危険。安全な場所に逃げたいなら、市中心部に逃げるしかない」と話す人も。同室は「自助としてまず自分で自分の身を守ってもらいたい」と強調。「安全かつ迅速に逃げられるよう、事前に自宅や近くの避難所にどんな危険があるのか把握し、避難方法を確認してほしい」と呼び掛ける。「中津江で大きな土砂災害があったとは聞いたことがない。でもいつ何が起こるか分からないのが災害。中津江の“初めて”が明日来るかもしれない」。大内自治会長は警鐘を鳴らした。
警戒区域へ、調査急ぐ・・・山間部の多い県内は、土石流、崖崩れ、地滑りの恐れがある場所が多い。県の選定する土砂災害危険箇所は1万9640カ所ある。日田市内は1937カ所あり、最多は佐伯市の2996カ所。危険箇所では宅地造成などに対する法的拘束力がないことから、県は土砂災害防止法に基づく警戒区域・特別警戒区域への指定を進めている。
県によると同法制定のきっかけは、1999年に広島県内で発生した大規模土砂災害。危険箇所には民家が密集しており、24人死亡、325戸が被災する大惨事だった。翌年に同法が施行。都道府県が危険箇所を調査し、土砂災害の恐れがある場所を警戒区域、宅地造成などに法的制限を加えられる特別警戒区域として指定している。
ただ、調査要項が細かいため、日田市では年間に約40カ所ずつしか指定されていなかった。県全体で警戒区域・特別警戒区域は3898カ所(11月末現在)あり、うち特別警戒区域は大半の3593カ所。今年8月に発生した広島市の大規模土砂災害以降、県砂防課は「今まで以上に調査、指定を迅速に進めている」という。