大分合同新聞では、振興局再編問題について5日間に分けて報道された。・・・・『地域に根差して 日田市からの報告⑤』 弱まる支援の力・・・・ 「昔は地域自体に相互支援の仕組みがあった。上津江の人口は減り、集落内の支援の力も弱まっている…」。元上津江村長で、日田市上津江町に住む高畑龍之助さん(74)は話した。それでも高畑さんの暮らす白草(はくそう)集落(19世帯)はまとまりがいい。年に7、8回は昔から受け継ぐ小さな祭りを催す。11月は豊作や健康を祈願する御願成就の祭りだった。地域総出で子どもから高齢者まで約40人がお宮に集まり、持ち寄った食事を囲んだ。
「誰かが調子が悪いとか、不便をしてるとか、田んぼの米の出来、わざわざ聞くほどでもない近況を交わす場になってますねぇ」と嶋津浩一郎さん(56)。集落では1人暮らしの高齢者宅に近くの住民が顔を出すのは当たり前のこと。毎月10日は女性グループが各戸で作った野菜を福岡県大牟田市で販売している。高齢者らにとっては小遣い稼ぎにもなるが、大牟田との交流が生きがいづくりにもなっている。振興局再編の提案について「これまでのように補助金や税金で支えられた社会は維持できない」と市企画振興部。公共サービスを市民やNPO、企業などの民の力が主体となって担う「新たな公共」の社会づくりを目指すのだという。
「互いに意見を」・・・・ 「日本の『お任せ民主主義』が育てた自治の在り方を変える時期。振興局再編で反発が起こることは想定していた。波紋が起こらないと本当の議論が始まらない。私たちが現場に出向き、互いに意見を交わして作り上げるべき話」と原田啓介市長の決意は固い。国は地方消滅だ、地方創生だと騒いでいるが、上津江地域では高畑さんが村長を務めていた10年前よりもっと前から経験済み。地域で暮らす自治の在り方をずっと模索してきた。いよいよ頼るところがない時代になってくる。住民自身が自助自立の精神を持ち、集落や地域がまとまって進むべき道を見いだす。だからこそ地域を自立させる策が必要です」かつて村長を務めた高畑さんの言葉は重い。 =終わり=
※この記事は、12月31日大分合同新聞朝刊1ページに掲載されています。
≪日田市の振興局再編の背景≫ 2005年の合併時に約7万6千人だった人口は約6万9700人(14年3月末現在)まで減少。高齢化率は30・37%。市の一般財源のほとんどを占める市税と地方交付税は減少傾向。今後5年間で、合併前の1市2町3村の総額で上乗せされていた普通交付税は、段階的に削減される。削減額はおよそ15億3900万円と見込まれている。高齢化による社会保障費や、橋や道路などの公共インフラの老朽化による経費なども待ち構える。