有権者の民意は完全に踏みにじられた!!

2012/06/26

新聞報道から・・・消費税増税法案の採決が民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決された。投票総数459票のうち、賛成363票、反対96票だった。民主党で反対票を投じたのは小沢一郎元代表、鳩山由紀夫元首相ら57人だった。 「一体」改革法案が衆院を通過した。消費税は増税しないと衆院選で公約した民主党による約束違反は明白だ。苦い教訓は次の選挙にこそ生かしたい。有権者のやり場のない怒りは、どこにぶつけたらいいのだろう。 3年前の衆院選で、消費税は増税しないと公約して政権交代を実現した民主党議員が、敵対していた自民、公明両党と結託して消費税率引き上げ法案に賛成する。自民党とは違う脱官僚や政治主導、税金の無駄遣いを徹底的になくすことで「コンクリートから人へ」の政治実現を期待した有権者の民意は完全に踏みにじられた。ルール違反は明白。消費税を増税する理由を「社会保障改革を実現する上で、どうしても安定財源が必要だ。しっかりと国民で助け合う、支え合うための税金として消費税を充てる」と説明する。

本格的な少子高齢化を迎え、社会保障制度を持続可能なものに抜本改革する必要はある。国の借金が一千兆円にも上る財政状況に対する危機感も首相と共有したい。いずれ消費税増税が避けられないだろうことも理解する。しかし、引き上げることはないと公約した消費税の増税法案を、衆院選を経ずに成立させてしまうことは、民主主義の明白なルール違反にほかならず、納得がいかない。政策の具体的な数値目標や達成時期、財源を明示して政権選択肢を示すのがマニフェスト政治だ。首相が〇九年衆院選時に公言したように「書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらない」というのは大前提だ。英国を本家とするマニフェストは日本では〇三年衆院選以降、各党が導入した。国民が政策によって政権を選ぶという、定着しつつあった流れを断ち切った野田首相の責任は極めて重い。 「棚上げ」か解散をもちろんマニフェストは万能ではなく、一文字たりとも変えてはならない「聖典」ではない。

加えて日本政治は代議制民主主義だ。状況の変化に応じて公約と違う政策を、選挙を経ずに進めなければならない場合もあるだろう。しかし、首相が消費税増税の前提とする少子高齢化は突然始まったことではない。増税路線への転換は、税金の無駄遣いをなくす努力を怠り、官僚支配を突き崩す政治生命を懸けた熱意が足りなかったことの当然の帰結である。少子高齢化は言い訳にすぎない。民主主義では結論とともに手続きも重要である。国民の理解を得るための手順を欠いた政策は、それがたとえ国民に必要だとしても理解や同意は得られないだろう。「信なくば立たず」である。首相がもし消費税増税が日本の将来に必要だと思うのなら、自公両党と組んで中央突破を図るのではなく、面倒でも手続きをやり直す労苦を惜しんではならない。首相が今すべきは小沢一郎元代表ら民主党内造反議員の処分ではなく、「国民会議」で一年以内に結論を得る社会保障改革の全体像が決まるまで消費税増税法案を棚上げするか、衆院を解散して国民に信を問うことだ。三年前の暑い夏、高い期待を担って誕生した民主党政権が今、国民の眼前にさらすのは、自民党に同化していく無残な姿である。首相はそれを「決められない政治」からの脱却というが、指弾されているのは、既得権益や官僚支配など「変えるべきことを決められない政治」だ。公約違反の消費税増税など決めない方がましだ。 民主党政権の消費税増税路線への変わり身は、われわれ有権者にとっては苦い経験となったが、そこから得たものを、日本の政治を前進させる教訓としたい。 白紙委任ではない。まず、マニフェストは完璧ではない。本当に実現できる政策かを見極め、選挙後も実現状況を監視する。白紙委任してはいけない。

法案への賛否が議員の最も重要な政治行動である。各法案への投票行動を詳しく知る必要がある。政策で議員や政党を選ぶ。公約した政策を実現しようとしないのなら、次の選挙では投票しない。この循環を完成させない限り、日本の民主主義は前に進まない。有権者が投票する際の材料を十分に提供するのは、われわれ新聞の重要な仕事だと肝に銘じたい。消費税法案に反対した57議員リストは次のとおり・・〈小選挙区選出〉

(当選14回)小沢一郎(当選8回)鳩山由紀夫(当選5回)東祥三、山岡賢次、山田正彦、川内博史(当選4回)牧義夫、松野頼久(当選3回)小泉俊明、小宮山泰子、鈴木克昌、樋高剛(当選2回)青木愛、太田和美、岡島一正、古賀敬章、階猛、辻恵、中川治、松崎哲久、横山北斗(当選1回)石原洋三郎、石山敬貴、大谷啓、岡本英子、加藤学、木村剛司、京野公子、熊田篤嗣、黒田雄、瑞慶覧長敏、平智之、橘秀徳、玉城デニー、萩原仁、畑浩治、初鹿明博、福嶋健一郎、福島伸享、福田衣里子、村上史好

〈比例代表選出〉(当選5回)小林興起(当選3回)中津川博郷(当選1回)相原史乃、石井章、大山昌宏、笠原多見子、金子健一、川島智太郎、菊池長右エ門、熊谷貞俊、菅川洋、高松和夫、中野渡詔子、橋本勉、水野智彦、三宅雪子

▼欠席・棄権 〈小選挙区選出〉 (当選6回)小沢鋭仁(当選5回)原口一博(当選4回)黄川田徹(当選3回)篠原孝、村井宗明(当選2回)石関貴史、梶原康弘、橋本清仁、福田昭夫(当選1回)石森久嗣、空本誠喜、宮崎岳志 〈比例代表選出〉 (当選1回)玉置公良、柳田和己、山岡達丸