「大安」や「仏滅」など「六曜」を掲載した自治体製作のカレンダーが「差別的行為の助長につながる」として、回収される事態が県内で起きている。他の自治体からは「市が今どき掲載しているとは少し驚き」「職員研修でも差別を助長する例として取り上げている」との声が上がっている。一方で、婚礼や葬祭、棟上げや車の納車などの日取りを六曜に結び付ける考え方は生活の中に根強く残っている。
六曜掲載のカレンダーを製作し回収したのは、県と6市町村でつくる国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会、佐伯、杵築、臼杵の各市。佐伯市は市内全世帯(約3万3600世帯)に配る予定だったのを見送った。この報道を受け、杵築市と同協議会は世界農業遺産カレンダー、臼杵市は市農業委員会が製作したカレンダーを回収した。自治体の多くは、六曜を科学的根拠のない迷信・因習の一つで差別意識につながる例と位置付けている。職員研修や人権学習会で取り上げている市もある。国東市は今回の事態について「市職員の気付きの問題。製作する過程で気付く人はいなかったのか」と指摘する。
県、宇佐市は1994年、別府市は99年までそれぞれ六曜掲載のカレンダーを製作していた。職員研修で取り上げているという宇佐市は「使用してはいけないと直接的に指導しているわけではないが、公の配布物に使うときは気を付けるべきだ」とする。九重町は「六曜が悪いわけではない。根拠のない風習や文化が差別を助長する恐れもある。行政としてその点は配慮している」と冷静な見方。
六曜との結び付きが強い民間の業界では今回の事態に疑問を抱く人も。婚礼業界の関係者は「六曜にこだわる人は以前に比べると少なくなっているが、まだ大安などの吉日を好む人は多い。六曜を使うことが差別につながると言われても正直なところピンとこない。逆に差別と意識してしまうことの方が、差別を助長する気がする」。カレンダーや暦の歴史・文化の保護に取り組む日本カレンダー暦文化振興協会(東京都)は「心の持ちようや信念、信条に関わる部分なので否定も肯定もできない。六曜を載せようが載せまいがどちらでもいいと思う」としている。 ※この記事は、12月27日大分合同新聞に掲載されています。