日本がロンドン五輪で掲げた目標は、世界第5位相当の金メダル15個。前回北京五輪の9個をも下回る7個は、期待外れだったのは言うまでもない。日本オリンピック委員会(JOC)は北京後に、各競技団体に強化プランの策定を指示。日本選手団団長の上村春樹JOC選手強化本部長は「15は可能と思った」と振り返るが、結果として見立てが甘かった。
特に柔道の不振が際立った。男子は五輪で初の金メダルなし。メダル量産を狙った女子も1個どまり。抜本的な立て直しを図らない限り、お家芸の復活はない。一方で38個のメダル総数はアテネの37個を超え、史上最多。メダルを取った競技数も13に上り、過去最多のアテネの10を更新。幅広く全体が底上げされたことを示した。「初もの」が続出した。開会式の翌日に三宅宏実(いちごグループHD)が重量挙げ女子初の銀メダル。サッカー女子、卓球女子、バドミントン女子の銀、アーチェリー女子の銅がいずれも史上初だった。
ボクシング男子ミドル級では村田諒太(東洋大職)が日本勢として48年ぶりの金。レスリング男子の米満達弘(自衛隊)も24年ぶりの金。バレー女子も28年ぶりの銅を獲得するなど復活劇も多かった。競泳は金はゼロだったが、計11個のメダルラッシュだった。
背景に環境の整備がある。北京五輪直前に稼働したナショナルトレーニングセンターなどを各競技団体がフル活用。団体で初の銀メダルを取った日本フェンシング協会の張西厚志専務理事は、「年間を通じて当たり前に強化できるようになった」と話す。国のマルチサポート事業も医科学の面で競技力向上を支えた。五輪期間中は支援拠点を選手村近くに設置。和食提供なども、選手らの好評を博した。
ただ、金メダルを最大目標とする以上、さらなるてこ入れは必要だ。4個の金をもたらした日本レスリング協会の福田富昭会長は、「特殊な才能がないと金が取れない世界になった」と言う。韓国のように一定の競技に特化し、若年世代から徹底して鍛えるような方法も考えられる。スポーツ基本法が昨年制定されたことで、国の支援はさらに充実するはずだ。それに見合う成果を挙げていかないと、スポーツ界は納税者の厳しい目にさらされることになる。[時事通信社]