安倍晋三首相は今日午前の衆院予算委員会の集中審議で、教育委員会制度の見直しについて「責任を分担することで行政上の最終的な責任の明確化ができていない現状を、変えていく。これは共通認識だ」と答弁し、首長の権限を強めることに改めて意欲を示した。「ベストの案をまとめて法案として国会に提出したい」とも述べ、見直しに伴う地方教育行政法改正案などの提出も表明した。首相は現行の制度について「だれが最終的に責任を持っているか、大きな課題がある」と答弁。さらに「教育の安定性、教育行政の中立性も大切で、そして責任の所在も明確にする。選挙で選ばれた首長の権限をどうすべきか、ずっと議論してきた」とも述べた。
政府・与党は自治体の教育委員会制度改革について、教育委員長と教育長のポストを統合して常勤の「代表教育委員」(仮称)を設ける方針を固めた。自民党の小委員会が大筋合意した。教育行政の最終決定権は教育委員会に残すが、代表教育委員の任免権は首長が持つ。首長や代表教育委員も加わる協議会を新設し、教育方針を定める「大綱」などを策定する仕組みとする方向だ。
教育委員長と教育長の2ポストはこれまで、首長が選任した教育委員の中から互選で決める仕組みだった。改革案では首長が直接、代表教育委員を任免する仕組みに変更した。一方、教育行政の最終決定権(執行機関)は教委に残し、教育が政治的な影響を過大に受けないよう配慮した。教育委員長と教育長のポストの統合は、教育行政の責任体制を明確にするのが目的。2011年に大津市で起きたいじめ自殺で同市教委の対応が批判を受けたことを踏まえ、常勤とすることで緊急時の対応も可能にする狙いがある。
各自治体で定める教育方針などを示し、教育振興の方向性や予算の優先順位などを決める「大綱」は、新たに設ける協議会で策定する方向。協議会には首長も加わるため首長の発言権が拡大する。協議会のメンバーは首長と代表教育委員のほか、有識者や地元住民らを想定している。ただ教科書採択や教職員の人事異動の基準などについては自民党内にも「協議会に権限を持たせすぎると教育の中立性が損なわれる」という懸念があり、協議会の権限の範囲は今後詰める。
政府の中央教育審議会(中教審)は昨年12月、自治体の首長に最終決定権を移す案(A案)を下村文科相に答申したが、自民、公明両党から「教育の政治的中立性が保てるのか」との懸念が続出。A案を推していた安倍晋三首相、下村文科相も小委員会の改革案の説明を受け、大筋了承する考えを示していた。